自然住宅コラム
 
ホーム>自然住宅コラム>建築家と語るー吉田 桂二先生
 
 
自然住宅コラム

地域主義工務店だから
できること

 
自然住宅コラム 生命(いのち)の家づくり
自然住宅コラム
建築家と語る
-
  -
自然住宅コラム
鼎談
 
モデルフォレスト運動に取り組む
     
 

 

 

 

 
地域主義工務店だからできること

百年以上も使われた昔の家に比べ、寿命が短くなった現在の住宅。断熱性・気密性を高めたため、通気性が失われ、湿気と結露によって腐朽しやすくなったことも一因だと考えられている。また、住み手にとっては家族や地域からの孤立、シックハウス症候群など、さまざまな矛盾や問題を抱えるようになった。そんな家づくりに疑問を投げかける「彩工房」森本均氏と、「間違いだらけの住まいづくり」など数々の著書で日本の住宅づくりの現状にメスを入れる建築家・吉田桂二氏が住まいづくりの理念や住まい方について語り合った。
吉田桂二先生 プロフィール
建築家・工学博士・元東京芸術大学客員教授
昭和5年岐阜市生まれ。
27年東京美術学校(現東京芸術大学)卒業後、同年(財)建設工学研究会・池辺研究室に入所。
32年同所退所、(社)連合設計社設立。平成3年吉田五十八賞受賞、翌年日本建築学会作品賞受賞。
「住みよい間取り」「家づくりの原点」など著書多数。
   
家族がふれあえる家に
森本 

住宅建築に携わりながら、これからの新しい家は、何を大切にしていけばいいのかと悩むことがあります。間取りや空間の取り方も昔とはずいぶん変わってしまいました。

吉田 
住宅が「工業製品」になったことで矛盾や問題が生じたような気がします。一つは、間取りが画一化したこと。住まいが箱のような部屋の集合体となってしまいました。二つ目は家全体の形も、箱のような部屋を入れる大きな器のようになり、大工や左官などの職人の腕の見せ所がなくなったこと。三つ目は、コストを抑えるために工業製品を多用することで環境だけでなく、人間の健康にもよくない影響を及ぼすようになってきたことです。
森本 
間取りの変化で特徴的なことは、個室を重視し、空間を分断するようになったことですね。かつて日本家屋には子ども部屋などはなかったように思います。子ども部屋をつくる前に子どもの育つ場はどんな空間がいいのかと考えることが大切ではないかと思います。
吉田 
空間と空間のつながり方が大事ですね。子ども部屋を与えたら、そこで勉強すると思うのは大きな間違いで、実際にはそうはいきません。家族が触れ合えないような間取りだから、家族間の断絶などの問題も生じてきたのです。顔を合わせない関係を、間取りでつくってしまっているわけです。
森本 
住まいのつくり方が、家族関係までも変えてしまうとしたら、設計者の責任は重いですね。家族が家の中で「別れて暮らす」のか「集って暮らす」のか。その鍵はつながりのある開放的な間取りにありそうですね。
吉田 
子ども部屋がいけないのではなく、家族の気配を感じさせるプランが絆を強めるためにも大切です。吹き抜けや引戸など、日本家屋にそのヒントはあります。
森本 
間取りだけでなく素材や技術、そして意匠なども古来の日本家屋から学ぶことが多いですね。今、京都の町家が見直されていますが、ムクの素材感や手仕事の温もりが魅力の要素になっています。日本人は木の家が一番落ち着くのではないでしょうか。
吉田 
木造は木を伐採し、自然環境を破壊するからいけないという意見があり、輸入材に頼っているのが現状ですが、外国では木を伐採した後、植林しません。しかし、日本は伐ったら必ず植林し、それを育てます。このサイクルが大事なのです。今の住宅は車のように買い換えますね。十五年、二十年で建て替えるものだから木の育つ暇がないのです。昔のように「百年住む」という意気込みで家を建てていませんね。
森本 
また、木造と言いながら壁で覆ってしまい、木が隠れてしまっています。これももったいないですね。
吉田 
木は呼吸しているので、木を露出する方が家は長持ちするのですがね。
「京町家」は知恵の宝庫 適材適所で素材を活用
森本 
そういった点でも在来工法は優れていますね。
吉田 
木の柱や梁、塗り壁などは大工や左官の腕も必要になるから、技術の継承にもなります。在来工法というより伝統工法というべきですが、これはいろいろな意味で利点があります。第一、日本の気候や風土に即しているのですから。
森本 
湿気の多い日本の気候の中で高断熱・高気密の家を建てると、シックハウス症候群などにかかりやすくなります。結露によって発生したカビやダニ、さらにはビニールクロスなどに含まれる化学物質が建物内に充満し、体調不良を訴えるケースが多くなっています。そこで、換気が必要だと、エネルギーを使って強制換気をしています。これはおかしいのではないでしょうか。昔の家のように、風が自然に流れる空間のつくり方ができると思うのですが。
吉田 
確かに矛盾していますね。手で窓を開ければいいのに。昔の家は隙間が多くて悪い空気が部屋に充満しないこともよかったのです。高気密でない方がいいのですよ。家の空気を循環させると言えば、京町家の坪庭などは大いに学ぶべきです。何のエネルギーも使わずに、しかも美的に空気を流す。こういう受動的な自然活用法を考えないといけません。
健康は環境づくりから
森本 
パッシブソーラーという考え方がありますが、いわゆる太陽熱をうまくいかして快適な住まいを実現するということです。当社で取り組んでいる「壁体内通気工法」もこの考え方により、太陽熱以外のエネルギーを使わずに、壁体内に空気を自然に循環させて室温と湿度をコントロールしているものです。先生が今おっしゃった「受動的な自然活用」がコンセプトです。このたび先生に設計していただいたモデルハウスも、この工法を採用しています。
吉田 
エネルギー問題にも関係しますが、これからは家のつくり方だけでなく、住まい方も見直すべきです。昔の日本人の生活様式や美意識に学ぶ点がここでも多くあります。換気は自分で窓を開ける。朝はかどを掃き、水をまく。不必要なものは持たない。しかし、家を筆頭にいいものは長く愛着をもって使いこなす。家はメンテナンスしながら丁寧に住み継ぐ。しまうもの、出すものを使い分け、生活にメリハリをつけるなどなど、省エネや環境が問われる今こそ、こういったライフスタイルが求められると思います。これは、京都がずっと実践してきた生活様式です。
「住まい方」の見直しを 近隣との関係性を考慮
森本 
京都の人は「分相応」ということを大切にし、自分の身の丈に合った住まいや住まい方を大切にします。広ければいい、大きければいいと考えるわけではありません。家の大きさよりも落ち着いて美しく暮らすことに価値を見いだすのではないでしょうか。小さくてきゃしゃな家ながら、職人のセンスを感じる見事な町屋建築もあります。木も適材適所に巧く使ってあります。住まい方の一つとして、近隣との関係も巧みですね。生活の知恵ともいうべき町内のシステムがあり、これが地域防犯や防災、それに教育にまで役立っています。
吉田 
長く都市であった京都は、自分の家だけでなく、地域全体、町並み全体とのバランスを考える文化が育ったのですね。それが、気候や風土、あるいは人情に即して家や町を形づくってきたのです。感心するのは町家の屋根。お互いに境界線を越えて、高低差をつけて共存しています。狭い土地に家を建てる時の工夫です。雪国なら隣に雪が落ちない屋根の形がありますが、住まいは一軒だけでなく、近隣との関係性の中で考えるべきだと思います。そういう町は美しいです。
森本
町並みの美しさは、家そのもののデザインやプロポーションの美しさだけでなく、住人の営みの美しさでもあるということですね。ものや人、技も含めて京都のストックを存分にいかし、そして自然素材をいかした美しい木の家づくりに励んでいきたいと改めて感じました。ありがとうございました。
 
彩工房の京都鴨川建築塾   彩工房へのお問合せ
 
コピーライト 会社案内 VEとCM 採用情報 リンク プライバシーポリシー