 
家づくりにはいくつかの解決しなければならない問題があります。
資金の問題。建築費がいくらかかるのか。諸費用がどのくらい必要なのか。住宅ローンで借りれば返済は月々いくらのなるのか。節税対策は?
敷地の問題。マンションからの住み替え。建て替えの場合も、この際もう少し広い敷地を探そうかということもあります。
そして誰に建ててもらうか。
ハウスメーカーや工務店。設計は設計事務所に依頼して建設会社が建てる場合もあるでしょう。いくつかの選択肢があります。
最近では、一度も住宅展示場を覗いたことがないという方は少ないでしょう。
住宅展示場に足を運んでデザインや、住宅設備を確認される方は多いと思います。
これも必要なことだと思います。但し訪問や説得という営業マンの攻勢を少し覚悟しなければなりませんが。
ハウスメーカーと工務店の違いは何でしょうか。
ハウスメーカーは会社の規模が大きく、商品の開発力に優れています。
営業マンも教育され、セールストークも洗練されています。
情報力、信用力も圧倒的です。
地域の工務店は希弱です。人材も豊富ではありません。
しかし断然違うのはものづくりに対する考え方です。
実際ハウスメーカーの家も、建てているのは全て地域の工務店です。
地域の工務店がいなければ家は建ちません。
しかし、工務店がハウスメーカーと同じような家づくりを目指してもそれはかなうわけがありません。
ハウスメーカー同士が熾烈な競争の中で商品開発し、そして家を売るための努力、掛ける人材や、広告宣伝。
最先端のいわゆる新建材を工務店が仕入れて家を建てたとしても、せいぜいハウスメーカーの使う広告宣伝費や、人件費を削った分少し安くできるのが関の山でしょう。
普通に考えればハウスメーカーに地域の工務店が勝てるはずはないのです。
ハウスメーカーを持ち上げるようですが、実際そういうものなのです。
DACは創業90年になりますがハウスメーカーのビルダーを経験したこともありハウスメーカーのことはよく知っています。
ですからある時期木造の住宅建築に積極的には取り組んできませんでした。
とはいっても年間数棟は鉄筋コンクリートや鉄骨造の家をはじめ、ツーバイフォーの住宅を建ててきましたが…。
それでは何故我々が改めて住宅づくりに積極的に取り組みだしたのか。
それは一言でいうと時代が変わってきたからです。
住宅に住むという事情が変わってきたからです。ハウスメーカーでは対応できないことが出来てきたからです。

戦後60年という時間はそれなりの意味があると思います。
世代交代。団塊の世代の人達が60代半ばになり時代の担い手が次の世代に引き継がれてきているということは、既に物質的に豊かな時代に育った人達が中心となってきたということです。
住宅戸数が世帯数を超え、量的には満たされて、質が求められるようになりました。雨露をしのぐということから日々の暮らしを楽しむ空間が求められるようになってきました。
一方で、核家族化も進み、一世帯でそれぞれが自分の家を持つようになり、家族関係も変わってきました。そして少子高齢化社会。これからは単身者世帯が多くなります。
豊かな社会は個人主義を育み、環境問題にも目を向けさせました。
しかし日本人社会の個人主義はまだ始まったばかりで問題が目立ちます。
「家を建てて家庭を失う」という話があります。
日本人が貧しくて大家族で生活していた時代。
ふすまで仕切られた畳の部屋に親と子供が一緒に寝ていました。
家は寒くて居間には堀こたつがあり、家族は当たり前のようにその部屋に集まっていました。
お父さんが一家の担い手で、みんながお父さんの帰りを待っていました。
というよりも時々ケーキや果物など、お土産を買って帰って来るお父さんはまさに英雄でした。
生活が豊かになって新しい家を建てることになり、それぞれに個室が与えられるようになりました。テレビは各部屋にあります。エアコンはそれぞれの部屋を夏でも冬でも快適な温度を保ってくれます。洗濯機は洗濯物を放り込んでおけば、夜中の間に乾燥までやってくれます。
生活費はかさみますが、家庭の仕事が省力化されて時間ができてきたので奥さんが外で働きやすくなりました。専業主婦より生きがいがあるといいます。
家族がみんなで集まる団らんの時間はほとんどなくなり、子供たちは自分の部屋でテレビゲームに講じ、いつ出かけたのか、いつ帰ってきたのかわからないくらいです。
いつの間にかお父さんは、一家にとって尊敬される存在から、粗大ゴミとまで言われるようになりました。
こうなると笑い事ではすまされません。豊かな生活を夢見て建てたマイホームですが一体どうなってしまったのでしょう。
本当に笑い事ではないのです。
最近、私達彩工房に来られるご家族にも、こういった社会の仕組みについて問題意識をもっておられる方が増えました。
環境問題ともあわせて、豊かな暮らしためのどのような住宅を建てていけばよいのか、家族の語らいのどう考えるのか、子供たちの成長に合わせた部屋の使い方はどうすればいいのか、自然素材はどのように使うのか、省エネルギーはどう考えるべきか等々。様々な問題意識の中で、実によく勉強されています。
ものの豊かな時代に、住宅は単に部屋数や広さが求められだけではなくて、心の豊かな生活が営まれる空間を提供することが必要になってきているのです。
家族が仲良く快適に過ごせて、一家団らんの中で感性の豊かな子供が育つようにするにはそれなりの工夫が必要なのです。
ものが豊かになればそれに見合って心も豊かにならなければ意味がないのではないでしょうか。気づかい、心づかい、言葉づかい、が大切です。

私達彩工房は人間の持つ自然感覚を大切にしたいと考えています。
何故かというと、気づかいができると言うことは、感受性が豊かでなければなりません。感性は人が本来ある自然との接触のなかで磨かれます。
四季の移ろいを感じる。周囲の気配を感じる。人の気持ちがわかる。わからないと人への気づかいは出来ません。
現代の生活は、空調機や家電製品、携帯電話、ゲーム機など人工物であふれています。
あまりにも人工的に作られた空間に育った人間には自然に対する畏敬や宗教心は芽生えにくいでしょう。果たしてそれでよいのでしょうか。
元来、人は森に暮らしていました。自然感覚を育むには木の持つ機能や文化性を大切にして、生活空間を作り出すことがよいと考えています。そのためにはやはり合板や集成材ではなくて無垢材の状態で使っていくことが大切だと考えています。
都市生活の中で自然感覚を育むような取り組みは非常に難しいと考えられます。
しかし京都では、日本で最初に都市生活が育まれただけに、さすがにその永い歴史の中で、自然環境をうまく取り入れた知恵が見受けられます。
たとえば京町家にある坪庭。換気や太陽光の取り込み、そして夏には水を打つと見事な冷却装置となります。通り庭やその上にある天窓、軒の簾なども生活の知恵の結晶でしょう。
自然環境を克服するのではなくて自然環境と折り合って生活する知恵を働かせることが、ものの豊かな時代にあっても、心の豊かな人を育てる大切な仕組みではないでしょうか。
今更、昔に戻って不便な生活をすることは考えにくいと思います。しかし単に家電製品や、情報機器に頼るだけでなく、工夫によって得られる自然と調和した生活は、感謝の気持ちを育み、他人への気づかいや、思いやりを育てるのではないでしょうか。 |