
以前、国産の無地材を使う数寄屋や、茶室は特別高く、一方で節のある国産材を使う一般住宅は安い建て売り住宅でした。
大量生産大量消費でコストダウンをする為の工場でのプレカットには国産材は不向きで、軽量鉄骨で作るハウスメーカーのプレハブ住宅が主流となりました。鉄筋コンクリートの住宅、輸入住宅や、海外の輸入建材で作る住宅の影で、国産材で造る住宅は好まれなくなっていったのです。
最近はよく住宅を買うといいます。私達はあくまでも住宅は建てるものだと考えています。
そこにはそれぞれの家庭の営みがあり、住む人とその土地の気候風土に応じた個性が大切にされなければなりません。
家を新築することは家庭の一大事であり、家族にとっての歴史的イベントです。設計者や大工さん、左官屋さんや、設備屋さんの知恵と汗の結晶が形となって家は出来上がっていくのです。
出来るだけ地元の木材を使って手刻みで建てていきたいのです。
勿論お客様もその一員であり家づくりに出来る限り参加してもらう。出来れば植林や伐採現場にも!だから自分が世界で一番大切にしたい家が出来上がると考えています。
住宅はクレーム産業であるといわれています。せっかく出来上がった住宅の建具の立て付けが悪かったり、傷があったり、特に国産の無垢材を使った住宅の場合梁材に割れが入ったり、ひねりがでて壁に隙が空いたりしたら大変です。
せっかく竣工した住宅がこれから住んでいただく方に喜んで貰えるどころかいきなりクレームでは何もかもぶち壊しです。木造住宅はそういった危険性を多く含んでいるのです。
工場で製品化されたものを現場で組み立てる式のプレハブ住宅の場合こういったことは全て不良品となりクレーム対象です。
ですから、プレハブメーカーは無垢の木を使いたがりません。できたらプラスチック加工された狂いのない木のようなものの方が扱いやすいのです。
確かに無垢材の問題は寸法安定性にあります。天然乾燥で使えるようになるのに少なくとも1年かかります。最近はやりの高温乾燥なら伐採から1ヶ月でも使えるようになりますが材質に問題がないとはいえません。高温乾燥材は木材内部にひび割れをい起こすことが多いからです。
従ってDACでは木材の燻煙熱処理技術に取り組むことにしました。
これについては後ほど詳しく述べます。
ここ数年、住宅に対する価値観は健康指向から自然素材に理解が広がり、さらには環境問題から国産材の利用に関心が持たれ始めました。無垢材の持つ性質が欠点ではなく特性として受け入れられ、問題を超えてその良さが理解されるようになってきたからです。
ここに地域の工務店が改めてその腕前を発揮する場面ができてきたのです。
戦後植えられてきた木が60年ほど経って住宅を建てるには丁度適当な大きさに育ってきました。しかし国産材の相場は安い外国産材に押されてまだまだ低く、林産家や林業家はなかなか営みとして事業が成り立ちにくい状況です。
木を伐採しても山に植林することも出来ず、山が再生されないことに繋がります。植林しても枝打ちや、つるきりもされず放りっぱなしになり、これでは山崩れや水害を引き起こし、生態系にも悪影響を及ぼすことになりかねません。
本当は50年育った木で家を建てて、その家が50年使われれば、又植林された木が50年育っているという生命循環が繰り返され、再生可能エネルギーとして活用されることが理想なのです。
国産材を使って住宅を建てることは山の環境を守る意味でも大切なことですが、これは大手ハウスメーカーには取り組みにくい課題です。
既に大金を掛けて設備投資したプレカット工場や機械設備には国産材が向かないのと、今更接着剤を使っているからといって、合板や新建材を排除することが出来ないからです。
また、分業の進んだ営業態勢では十分に木の良さを説明したり、又逆に木の持つ欠点を説明して、クレームのでない理解を得ることが難しいからです。
とはいえ、無垢材を使う上で寸法安定化の問題を放置するわけには行けません。
ということでDACでは燻煙熱処理技術を導入して木材の燻煙を笠取の工作所で取り組んでいます。
燻煙熱処理とは木材を燃やす時に出る熱と煤(スス)を利用して木材を燻(イブ)して寸法安定性を計る技術です。
木材が何故変形するのか?一般には乾燥過程において在中の水分が失われる時に変形すると考えられています。確かにその通りなのですが原因はそれだけではありません。
根本的な特性は木が生長する過程で様々な気象条件において何十年もその地に根付いて成長するわけですから何㌧もある木材が立っていることを維持するために内部の繊維質は相当に緊張しています。様々な力が加わることになりその繊維質が樹種によって異なる様々なネジレを起こしそれによって木は立っていられるのですが伐採して建材として使おうとすると内部応力が解かれ変形し出します。
その緊張状態にある木材に熱を加えることによって緩和しようというのが燻煙熱処理です。これには別の利点もあります。木材を燃やすことによって発生する熱いガスによって熱処理しますが処理室の中はほぼ無酸素状態になります。大抵の劣化現象がそうであるようにものは酸化によって質の劣化が進みます。しかし燻煙熱処理は無酸素状態ですから酸化は妨げられ材の劣化は抑制されることになります。
もう一点は燃料が木くずあるいは端材であることです。木材は立木が伐採されたときにCO2の発生がカウントされます。従って、燃やす時にはCO2のカウントはありませんので処理時のCO2発生はゼロです。場合によっては今後CO2発生の取引が出来るかも知れなせん。燃料に軽油や灯油を使う高温乾燥とは比べるまでもなく環境に優しい技術です。
環境問題と人の健康は同じ問題として考えるべきでしょう。
地球環境において人間だけが特別な存在ではありません。環境悪化は人間の健康に重大な影響を及ぼします。今や化石燃料の使用量の増加によって地球温暖化ガスの発生が気温の上昇を引き起こすまでになり、異常気象が懸念される中でLCCN(ライフサイクルカーボンマイナス)が住宅政策の大きな課題となっています。
また、室内で発生する有害化学物質を排除することについて改めてWTOが基準を示し健康に住める住宅を建てる上で重要なポイントであると認識されるようになりました。 |